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Selfishly

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Part 2 『再開』


彼は 変わっているだろうか、
  それとも、あの頃のままなんだろうか・・・。

例え 彼が、どんなに姿や雰囲気が変わっていても
  きっと、彼の中は変わらずいるだろう・・・。

鋼(つよい)意志の輝きを宿す彼の魂の輝(ひかり)は。


  ~ スローライフ
             Part2『再開』 H17,11/14 00:00




彼の電話から 数時間後、
ロイは 家に帰る車中の中で イライラしていた。

「ハボック、もっと速く走れないのか。」
「大佐~、無茶 言わないで下さいよー。
  これ以上のスピードを出したら、
  俺が中佐に叱られます。
それに、どうせスピードも出せないですけどね、
  この渋滞の中じゃ。」

車中では、さすが タバコはすえないので
トレードマークになっている咥えタバコの姿はない。
少佐となっている彼は送り迎えをする立場では
なくなっているのだが、
彼は相変わらず、時間の都合がつく限りは
ロイの送り迎えを続けている。
それだけ、ロイに敵が多いという事もあって、
護衛も兼ねての事だ。

ホークアイ中佐に厳しく、制限速度と
安全運転を言い渡されている彼は、
もう1つ、中将と密室に居るときには
例え許可があっても、喫煙をしてはいけないと
厳しく言い渡されている。
以前なら、ちょっと失礼と吸っていたし
ロイも気にしていなかったが、
さすがに、回復したといっても
病み上がりの中将の身体を考えての配慮である。

渋滞の中を、のろのろと進む車を忌々しく思いながら、
家の近くにいるだろうエドワードの事を考えた。
『近くに居るだけならいいが、
 彼の事だ、中に入ってなどと考えてなければよいが・・・』

中将の家には護衛の者はいない。
立場を考えれば 24時間居てもおかしくないのだが、
人員の無駄とロイが止めさせた。
ホークアイ中佐には、叱られたが納得もしてもらった。

実は、ロイは自分の家に 
ちょっとした仕掛けをしたのである。
ちょっととは言うが、精巧な高度な錬金術で
創られた仕掛けで、
常人では、到底超えられないし
錬金術師でも、おいそれと仕掛けがわからぬよう、
破れぬようにしてある。
その仕掛けは、死には至らないものの
かなり、危ないものには違いない。
エドワードが、いかに優れた錬金術師であっても
分野の違うロイの専門では
もしもの事も考えられる。

そうして、不安を抱えたままロイを乗せた車が
やっと家にたどり着いた。
家は 朝出て行った時のまま
変わった様子も見られない。

「じゃあ中将、明日は昼前に迎えにきます。」
「あぁ、頼む。
 気をつけて帰れよ。」
ロイが扉を閉めて中に入るまで見送ると、
ハボックは、静かに車を出した。

『まだなのか・・。』と思いながら
廊下の電灯をつけて、リビングに入っていく。

リビングに入ると在る筈の無い人の気配に
まさかと思いながら電灯をつける。
と、そこには、点けた電灯にまぶしそうに目を眇める
エドワードが、ソファーに座っていた。

「鋼の!」
「よぉ、たい、・・・中将。
 勝手にお邪魔してるぜ。」
「いや、それは構わないが・・・、
 どうやって・・・。
 君は何とも無かったのかね?」
入ってきたときに練成陣が有効だったのは
わかっている。
だからてっきり、彼はまだなのだと思ったのだが。

「ああ、この家。
 練成陣が張ってあったよな。

 ごめん、ちょっといじって入らせてもらった。
 外で待ってると目立つかと思って・・・、

 ちゃんと元に戻してるから。」
 
エドワードが、ばつが悪そうに言う。
ロイにしてみれば、彼の言葉は驚きの連続だ。
練成陣が張ってあるのに気づいた事までは、
さすがと思うが、
『いじって入った?
 それを元に戻した?』
そんな事が・・・と思いながらエドワードを
見つめていると、
「だから、ごめんって・・・。」と気分を害されたかと
困ったように謝ってきた。

「いや・・・、それは怒ってないんだが・・・。
 まぁ その事は後で聞くとして。
 鋼の 『お帰り』。」
そう言いながらロイは、エドワードの近くまで
歩いて行った。
「よく見せてくれないかな。」
ロイのうながしに、座っていたエドワードは立ち上がって
ロイの前に立った。

「遅くなったけど、約束は果たしにきた。」
少しだけ目線が近くなったエドワードは
それでも、ロイに目線を合わせるために、
少し上向きに顔を上げて、ロイの顔を見た。

ロイは まじまじとエドワードを見つめた。
入ってきた時には驚きが先で ゆっくりと
見ていなかったが、
彼は 変わっていない。
意志の鋼(つよ)そうな輝(ひかり)を灯した金色の瞳が、
エドワードの本質を映し出していた。

姿は少し成長したようだ。
気にしていた身長も、目線が近づく位にはなっている。
(と言っても、まだ頭半分には届かないが)
顔つきも、子供らしかった丸みのある頬から
大人に近づきあるシャープな感じになってきている。
雰囲気も、以前のように険がなく 落ち着いた雰囲気を
身に付けているようだ。


そして、
彼の右手は 生身の腕だ。
「戻ったんだな・・・。
 よかったな鋼の。」
彼の右手をとり、確かめながらロイが言った。

「・・・うん、サンキュー。」
エドワードも、こみ上げる嬉しさに戸惑いながら
うつむいて返事を返してくる。

ロイは、聞きにくかったが
聞かないわけにもいかず、
「鋼の、・・・アルフォンス君は・・・。」と
とまどいながら聞いてみると、
「あぁ、元に戻ったぜ!
  今も元気にしてるしな。」と今度は
満面の笑顔で答えてきた。
彼は相変わらず 自分の事にはシャイなままだ、
弟の事には、驚くほど雄弁になるのに
自分の事となると、必要最低限しか伝えてこない。
言葉も、表情も・・・。

二人が無事に願いを達成できた事がわかり
ほっとしたロイは、訪ねてきたエドワードに
お茶も出していない事に気が付いた。
「鋼の、お茶はと言いたいが 時間も時間だし、
 食事は食べて来たのかね?」

急に そんな事を聞かれたエドワードは
慌てたように断りを言う。
「えっ、大佐 いいよ、気にするなよ。
 こっちが勝手に押しかけてきたんだから。」

そんな事を言うエドワードが 可笑しくて
クスクス笑うと、それを見咎めたエドワードが
「何だよ!」と不満顔でつっかかってくる。

「いや~、君も大人になったんだなーと思って。
 以前なら、飯ぐらい奢れ と言われてたろうから。」

過去の自分の事を言われると
思い当たる事が多いのか
『ふん!』とばかりに顔を横に向けた。

『 この子は・・・、少しは大人になったかと
  思ったが・・・、
  やはり 鋼のは鋼だな。』
そんな態度に さも可笑しそうに笑い出すロイに
「あんた、笑いすぎ!
 まぁ、いいけどな~。」と苦笑気味に言うエドワードの
表情は、昔は見なかった表情だ。

今の彼は、変わらない部分と、成長した部分が
混ざり合ってできている。
子供の成長は 早いと言うことか・・・。
不在だった1年間が、彼を
 どんな風に変えていってるんだろうな。
知らなかった1年に、興味が惹かれるものがある。

結局、ロイも食事は まだだった事もあり
今から食事に出かけるのもと言う事で、
ロイが食事を作る事にした。

「あんた、料理なんか出来るんだ~。」
ロイの横で、色違いのエプロンを付けて
スープの味をみているエドワードが感心しながら
ロイの包丁捌きをみていた。

「今頃の男が 料理1つ出来ないで どうする。
 しかし、そういう君もなかなかだな。」
エドワードは、ゆでたかぼちゃを手際よく裏ごしし
ポタージュを作っている。
「おう、俺は 母さんと 師匠に仕込まれたからな~。
 でも、大佐は 意外だよなー。
 なんか、女性とかに作ってもらってそうなのに。」

「最近 作ってくれるような女性に縁がなくてね。
 君もわかったとうり、簡単には家にも
 入れないようにしてあるからね。」
程よく焼きあがった肉を薄切りにして、
ローストビーフを皿に並べていく。

「ふ~ん、まぁ あれじゃー危なくて入れないよなー。
 あっ、肉 もっと厚く切ってよ。」
「これは、薄いほうが美味しいんだ。
 まぁ、いいが・・・。
 君も、あまりお子様風の味付けにしないでくれよ。」

「誰が 味覚子供のチビだ!
 わかってる、かぼちゃ自体が甘いから余分な味付けは
 しないつもりだ。」

 小皿にとって味をみているエドワードが、
 納得したのか、うなずいて器に入れていく。

 「で、どうやって入ったんだね?」
 「う~ん、それだけ話すとややこしくなるんで
  答えだけ簡単に言うけど、
  要するに レベルがアップした?みたいなもんだ。」
  
聞いて更に疑問を大きくしたロイだが、
取りあえずは食事が冷めない内にと
食べる事にした。

食事中は、双方の料理を褒めながら
たわいない近況の話をして、食事を楽しんだ。
「アルフォンス君は、今は ダブりスの
 あの師匠の家で暮らしているのか。」
「うん、最近だけどな。
 もうしばらくしたら、学校にも行こうかって話してる。」
「しかし、ダブりスの師匠の処には
 捜査してる時には見つからなかったんだが・・・。」
 
「なんだよ、探したりしてたんだ。
 まぁ、師匠の処っても 最近までは家のほうじゃなくて、
 郊外の島に住んでたからな。」
「君達が 修行していたという島か?」
「そう、あそこは人も住んでないしな。
 俺らが 身を隠すのには もってこいの
 場所だったんでね。
  
 はぁ~、食ったー。
 上手かった、ご馳走様でした!」

きちんと挨拶をして、片付けるのに皿をさげはじめた。
二人分には多過ぎたかと思ったが、
まだまだ成長期のエドワードには、
問題は なかったようだ。

エドワードが片づけをしてくれている間に、
ロイは 食後のコーヒーを用意した。
今日は 話が長くなりそうだと、
ポットにも準備して・・・。




[あとがき]

まだ、進展が一切ないままですが、
気長にお付き合いください。
ロイとエドのエプロン姿~!
お似合いだろうな~、
誰かイラスト描いて下さい~。\(>o<)/
欲しいですー。(∇⌒ヽ)(ノ⌒∇)

  
  
  
 








 




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